「閃きフューチャーセンター(セッション)」は、私たちが昨年度から取り組み始めた、対話を重ねる場づくりの試み。
性別・年齢・職業などの異なる多様な立場の人々が集い、地域や社会の課題につながるテーマに沿った対話を重ねることで”何が”生まれてくるのかを大切にする取り組みです。
今回の「閃きフューチャーセッション」は、補助金問題でにわかに話題となった文楽をテーマにしました。文楽は地元大阪の文化にも関わらず観たこともない、難しい、取っ付きにくいイメージを持たれています。ゲストスピーカーの西川ゆかりさん(文楽のゆかり)は「大阪の文化である“文楽”の作品には、現代にも通じる社会問題が数多く取り上げられています。例えば『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)〈お染久松〉』は社内恋愛→できちゃった婚とぬかるみにはまり、最後は心中といった最悪のシナリオを辿ります。もっと文楽を認知してもらい、身近に感じてもらうことで文楽の裾野を広げたい」と語られ文楽の普及に努めておられます。そこでセンターも文楽を通して日頃向き合う社会問題を重ねて考えていただこうと開催しました。
会場は文楽、落語、歌舞伎とも縁の深い高津宮で、小谷宮司に冒頭「高津宮と文楽」のお話をして頂き、文楽の歴史のDVDで学んだ後、技芸員の吉田玉佳さん、桐竹勘次郎さん、吉田玉延さんに実際にお人形で仕組みや動かし方、ここでしか聞けない苦労話などユーモアいっぱいに話いただき、会場も一気に和やかな空気に包まれました。
いよいよ「閃きフューチャーセッション」では「今、感じたこと」を参加者がグループで話しそれぞれ色紙を書き、玉佳さんや西川さんに渡しました。さらにお二人も加わり参加者が文楽のキーワード(まずは文楽鑑賞/聴けて良かった裏話/分かりやすく底辺を広げよう等)を書いてテーブルに置き、気になるキーワードのテーブルに着き、次に事例として公務員試験にこだわり自殺まで考える29歳の息子と母の悩みについてグループで話しをました。ほんの数時間前までは全く面識のない参加者が、この親子の悩みを時には親や子どもの頃を思い出し、自分ごととして真剣に話し合いました。「文楽との共通点として封建時代の昔も今も“視野の狭さ”が死に至らせる」「まずは働かせてみては」との意見もありました。
1回目からのファシリテーターを務めて頂いている成松さんは「フューチャーセッション」は経験に基づいてじっくり話して下さいと声をかけ、再度テーブルにキーワード(どうぞ好きなように生きて下さい/全力で生きよう/只、今、生きているだけで良い等)を置き休憩に入りました。
休憩では話が続くグループやお人形とツーショットで写真に収まる人、玉佳さんや西川さんに質問する方など思い思いに過ぎていました。
最後は福山雅治さんの作詞作曲「生きてる生きてく」の歌詞を読み、「100年後のDNAに何を残すか」について話していただきました。場所を境内に移動して話すグループもあり、夕方で涼しい風が揺らいでいました。聞くとも無く聞こえてきた「私は子どもがいないので、遺伝子は残せない…」に傍らから「あなたの言葉が他の人の影響を与えて行くこともあるのですよ」と囁く声にハッとさせられました。
参加者からのキーワードには「次の100年に伝える心をつなぐ」「縁・過去とのつながりが面白い」「伝承されることのスゴさ」「身近な縁-つながり→伝承」が色紙に残されました。・こんな話が出来て嬉しい
・文楽も初めて、(フューチャーセッション)も初めてばかりで良かった
・こういう展開になるとは・・・
・ 初めて会って警戒心も持たずに話せて良かった
・本音のキャッチボール
・ 玉佳さんの「文楽を伝える」使命感に感銘を受けた
・ 文楽が大好きで、世代が違う人達と話せて良かった
と言ったご意見を頂きました。
4時間に及ぶ「フューチャーセッション」でしたが、文楽を知る人も知らない人も「対話」を重ねてそれぞれに「何か」を感じていただきました。今回の文楽も事例も自分ごととして考え関心を持って頂けたことに感謝します。(小野)